August 2015アーカイブ


先日、震災直後より続いている「DUST MY BROOM PROJECT」では、
今年は、昨年の石巻に続いて、気仙沼市立中井小学校にて、
友人の現代美術作家・大巻伸嗣さんのプロジェクト
「Memorial Rebirth」を開催しました。
この「Memorial Rebirth」は、日常の中にもう一つの日常として
シャボン玉を通じて、新たな光の記憶を構築することを
ひとつの目的とするインスタレーションでもあります。

そして今回の会場に選ばれた中井小学校では、
未だに、校庭のその半分は仮設住宅。
ですので、このような場所に多くの人々が集っての催しが、
本当にそこに暮らす人々にとって、楽しいこととなってくれるのか
そのことがぼくは、当初からとても気になっていました。

それでもぼくたちは、多くの人々に、そして子供たちに、
少しでもたくさんの笑顔が生まれることを願って、
青南商事の社員、東北大学の学生、東京芸大の学生、
そして、中井小学校の校長先生をはじめとした皆さんの力を借り、
朝から手際のよい微笑ましい連携で、50台の大型シャボン玉製造機を
校庭の中心に、山のように積み上げました。

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心配していた天気も、これまたいつものように天気予報を覆し、
とはいうものの、途中、通り雨もありましたが、
昼の部も、夜の部も、晴れやかな空の中で、
キラキラとシャボン玉が舞っていました。

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そして始まってみると、子供たちが楽しそうなのはもちろんのこと、
最終的には、隣接する仮設住宅の皆さんも全員、
宙に舞う、大量の虹色のシャボン玉を観に、家を出て来ました。
そのことが、とてもうれしかった。。。
そして、そんな仮設住宅の方からの
「ありがとうございました。」という言葉は、
ぼくたちにとっても、何よりの喜びでした。

ここ気仙沼も、復興という言葉には、まだまだ時間がかかりそうですが、
それでも一歩一歩進んでいくその歩みに、
これからもぼくたちも一緒に歩んでいこうと考えています。
打ち上げ時に聞いた、スタッフ全員の言葉にも、
そんな気持ちが溢れていました。

現在、ぼくと田尾ちゃんと大籏くんとで撮影した
写真と動画を編集中です。
こちらも完成したら、ご覧に入れられると思います。

そして来年の"311"には、岩手県山田町での
「DUST MY BROOM Memorial Rebirth」の開催が決定しています!

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2012年夏より「rakraラ・クラ」という
北東北(青森・秋田・岩手)を代表する隔月刊情報誌にて
『津軽』というフォトエッセイスタイルの連載を続けています。
そんな連載もうれしいことに好評とのことで、
間もなく次回で20回目を迎えようとしています。
そこで、ここのところぼく自身もまとめてみようかと、
第1回から自ら読み返しているのですが、
そこには、それぞれの季節感と共に、
ぼくの中にある『津軽』が育まれている様がありました。
来年2016年には、そんな『津軽』と、
その出会いとなった『リサイクル』をテーマとした展覧会が
「青森県立美術館」にて開催予定されています。
そのことも手伝って、ますます撮影も続いていきますが、
ぼくにとっての『津軽』も、より進んでいくことと思います。
そんないろいろも追ってお伝えしていきますが、
まずはこの『津軽』という連載を、
この場所でも、少しずつご紹介していきたいと思います。

今週は、その記念すべき第1回。


津軽1 鰺ヶ沢の白

ここからすべてがはじまったのかもしれない。
ぼくはこの地に立つと、いつもそんな風に思う。津軽半島の十三湊は、日本という国の中でも最も古い歴史を持つ貿易港だった。その港を中心にさまざまな文化が育まれていった。そうした歴史的背景がそこに存在していることも大きく関係しているのかもしれないが、ぼくにはそれだけではない、もっと大切な何かがここにはあるような気がしてならない。
津軽半島にとっての外海、日本海といえば、荒々しいイメージをもっていたぼくは、その色彩に対しても明るさを想像することはなかった。
ところがいざ青森鰺ヶ沢の海を目の前にすると、それが日本海であることを忘れてしまうほどの美しい色。青というよりも、むしろエメラルドグリーンに輝いている。少なくともぼくは、このような色をした日本海を今まで見たことがない。と同時に、そのすがたがとても自然だったことが、何よりも印象的だった。
そんな美しい海を眺めながら、港を抜けて海岸線を南へ歩いていくと、エメラルドグリーンとはまた別のグリーンの稜線が突如目の前に現れた。
最初は野原かと思ったが、それは田んぼだった。近くまで行ってみると、太陽をいっぱい浴びた稲穂が、そよそよと海風になびいている。風の流れというのは、肌で感じることは出来ても、なかなか目でとらえることはできない、しかしその時は、稲穂のゆらぎのおかげで、風の流れが手に取るようにわかった。そんな風の行方を追いかけながら、ぼくはまた、はじまりのことを考えていた。
 鰺ヶ沢でぼんやりと夜空を眺めていたある夜のこと。遠くには、イカ釣船の灯りがゆらゆらときらめき、海に浮かぶその位置を示している。大きな月が出ていたこともあって、とてもあかるい夜だった。
 そのあかるい月明かりに照らされて浮かび上がる海の色と光。それは透明であたたかい白色としてぼくには映った。
 これがすべてのはじまりの色だったのかもしれない--夜空を見上げながら、そんな確信めいたことを感じた不思議な夜だった。そしてそれは、ぼくにとって生涯忘れることができないあかるい夜となった。


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先週お話した、現在青山ブックセンター本店にて催されている
100人がこの夏おすすめする一冊」にて、ぼくが選ばしてもらった本が、
今回ご紹介する「長田弘全詩集」です。

長田弘さんという詩人のことは、
実はお名前だけは以前から知ってはいたのですが、
しっかりと認識したのは、あの東日本大震災の時でした。
長田弘さんは、福島出身の詩人ということで、
ある媒体で、震災についてのコメントを寄せられていたのですが、
そこには、このような言葉がありました。

「今回の震災で、一番の苦しみは、
このかけがえのない日常が失われてしまったこと。」

ぼくの中では、この言葉がとても心に残っていました。
なぜならば、ぼくにとっての写真行為というのも、
毎日続けている「今日の空」もそのひとつですが、
すべては、この日常の中から生まれているものに眼差しを向け、
その結果として成立しているものだと思っているからかもしれません。

そして数ヶ月前に、偶然長田弘さんの
「グレン・グールドの9分32秒」という詩を知りました。
グレン・グールドは、ぼくが最も大好きなピアニスト。
詩の内容は、そのグールドが自らピアノ曲として編曲した
ニュルンベルグのマイスタージンガー」の前奏曲について。
もっと簡単に言うと、その一枚のレコードと、
作者長田弘さんとのちょっとしたかかわりのお話し。
しかしぼくは、その詩を初めて読んだとき、
そのアナログレコードを奏でているであろう部屋の状況や、
針を落とす瞬間であるとか、
そこにある光の有り様さえも、
もちろん勝手な想像ではあるのですが、
ひとつの"ある日常の光景"として、目に浮かんで来ました。

長田弘さんは、残念ながら今年5月にこの世を去りました。
驚くことに、亡くなる前日のインタビューで、こんな話をされています。
"patriot"というと、通常は"愛国"のように訳されます。
そして"patriotism"となると、当然"愛国心"となります。
しかし、長田さんは"patriot"とは、本来"生活様式"のことを指し、
ですので、自身にとっての"patriotism"とは、"日常愛"のことであり、
自身のすべての詩は、そこから生まれている。とのことでした。

そんないろいろに導かれて、今回ご紹介する「長田弘全詩集」という、
詩人・長田弘さんのまさに全ての詩が、
そして全人生がつまっている大きな詩集を手に入れました。
こんな立派な詩集を手にしたのも久しぶりだったので、
うれしくなって、旅の途中に一気に読み進めたのですが、
すると、「グレン・グールドの9分32秒」だけではなく、
そこに綴られているすべての詩たちが、
まるでそれが当然のことのように、それぞれの情景を描き、
それはまるで、どこか夢の中の光にも似た、
"もうひとつの日常"とでも呼べばいいのでしょうか、
リアルなのに、だからといってすべてがリアルではない
不思議な世界の中にあるように感じました。
そして、それはぼくにとって、とても"写真的"な体験でもあったのです。

というわけで、今回はこの一冊を「この夏おすすめの一冊」とさせてもらいました。

東京は、それでも少しは和らいできたものの、まだまだ暑い日が続いています。
そんな日は、たまにはこんな詩集でも読みながら
"日常という夢の世界"を、ふらふら彷徨ってみてみてはいかがでしょうか。


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ここのところ、すっかりこのブログも、Facebookもご無沙汰ですが、
今日から、ちょっと思うところあって、まずは出来る限りということで
毎週月曜日に「ほぼ週刊菅原一剛」のようなブログを更新してみようかと。
まずは、ゆるりとちょっとしたお知らせより始めてみます。

そんな最初の月曜日は、ちょうど本日8月10日より8月12日まで、
新千歳空港ターミナルビルのセンタープラザにて開催される
マテック主催の「リサイクルアート展2015」展示会場に
ぼくの「十勝」の大型プリントが7点展示されます。

リサイクルというのも、人々の手によって作り出されるものですが、
実は、北海道は、中でも十勝地方もまた、人々の手によって、
開墾、そして開拓というかたちで、大きく育まれてきた土地。
ぼくの中でも、それはまだまるで消化できているわけではないのですが、
ただ美しいだけの北海道の光景だけではなくて、
少しでも、そんなこれまでの人々の思いのようなものが写ってほしくて、
ぼくなりにそんな思いを込めて「十勝」の写真を撮っています。
今回の展示は、点数も少ないし、あくまでも参考出展ですので、
まさにぼくの中でも、はじまりのような展示になっています。
そしてこの「リサイクルアート展」は、この新千歳空港での展示の後、
8月15日(土)〜8月17日(月)は、帯広市民ギャラリーへ巡回します。
その展示と共に、十勝の写真も観ていただけたらうれしいです。

また、もう一つお知らせです。こちらは東京。
2015年8月5日〜2015年9月30日まで、
青山ブックセンター本店のメインフェアの棚で展開される
100人がこの夏おすすめする一冊
ぼくも一冊選ばせていただきました。
ぼくが選んだ本については、また改めてお話ししますが、
ほかの方が選ばれた一冊にも、興味深い本がたくさんあります。
是非、青山ブックセンター本店までお越しください。

ではまた来週月曜日に。


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