June 2005アーカイブ

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思えばこのブログも久しぶり。今回は滞在したホテルの部屋においての通信事情があまり良くなかったたし、正直そんな余裕もなかったのが本当のところ。それでも慌ただしい中でいろんな光景に出会ったのも確か。そのあたりのスナップ写真は明日にでもアップする予定。そして今回の渡米の目的は何よりもPace/MacGill Galleryにおける「Made in the shade」展が全て。ご覧のようにこの上なく美しく、何とも光栄な展示に大いに感嘆。そして何よりもぼくのような新人作家をメインに掲げてくれたオーナーのPeterさんの心意気が嬉しかった。滞在中、彼とも忙しい最中お会いして拙い英語で数十分写真を見ながらミーティングをすることが出来た。とかくアートワールドを語るとき、そこには様々な情報が錯綜する。しかし今回ぼくがそこで感じたのは、そんなことは周りが勝手に言っていることで、その実態はもっと個人対個人の通常のコミュニケーションの上に存在しているという紛れもない事実だったような気がする。しかも彼は、その世界においては間違いなく頂点に存在している人だということを改めて実感した。そして今、その人とこうやって新しいスタートが切れたことを、心から誇りに感じている。しかもだからといって何が変わるわけではない。それを証明するかのように、今回は多くの仲間が同行してくれて、同じ場所に立っていた。そのことが嬉しかったし、その分どこかでまだまだ他人事のような気分? それにしてもニューヨークという土地は、いわゆるアートと呼ばれるものが生活に非常に近いところで存在していることを改めて痛感した。それこそ今回はみんなでヤンキースの試合も見に行ってはみたものの、そのことは既にぼくの記憶からは消えつつある。そしてこうやって日本に帰ってきて、残像として強く残っているのは、やはり新しくなった「MoMA」だったり、現在Mapplethope展を準備中のグッケンハイム美術館、そしてその街のど真ん中にある「Pace Gallery」の存在だったりする。そしてそれらの場所には、それこそあの街の全ての光景が凝縮されているような錯覚を覚える程。その光景を思い出しながら、これももしかしたらひとつの観光なのかもしれないと感じた今回のニューヨーク滞在だった。そしてぼくの写真が、その光景のひとつになった瞬間でもあったような気がしている。それでも残念だったことがひとつ。再会を心から楽しみにしていたロバート・フランク氏は、猛暑のニューヨークを離れてカナダのアトリエに行ってしまっていたので今回お会いすることが出来なかった。改めて「MADE IN THE SHADE」を敬愛するロバート・フランク氏に観て欲しいと願っている。

現在午前3時をまわったところ。先程やっと明日の準備が終わる。いよいよニューヨークに向けて出発である。今日は朝一番で太田さんと最後の詰めの打ち合わせをして、その席で本日無事に自身の作品が到着したとのニュースを聞く。しかも一同がその大きなガラスの固まりを見て「Beautiful!」と言ってくれているとのこと。そのことが何よりも嬉しい。そして昨晩は、サッカー日本代表もコンフェデ杯は敗退してしまったものの、あのブラジルに内容のある引き分けという善戦。昨日の中目黒八幡神社にはご祈祷をしていただいた上に、お守りまで戴く。多謝。とにかく後はどうなるかは判らないけれど、何となく天命を待つという感じ。そして今日は「Loopwheeler」が千駄ヶ谷に新装オープン! 沼ちゃんを誘ってそのお祝いに駆けつける。そこでもオーナーの鈴木さん、その店舗を作った片山正通氏をはじめ、多くの友人たちの笑顔に出会い、見えない力を貰ったような気がしている。それにしても美しいお店。しかもぼくはこのお店を知っていた? デジャブというよりももっと不思議な感覚。とにかく旅立ちの前に、見送ってくれる全ての人々に感謝を込めて、行ってきますの空。

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明け方より降り続けた雨も、午後になって止んで、夕方が近づくに連れて、空は青い部分が徐々に拡がって行った。しかしその水分をたっぷり含んだ大気がその速度をゆっくりとしたものにしているように感じる。昨夜も久保さんはほぼ徹夜でピンクプラチナプリントの最後の詰め。多謝。そして先程、これもまた時間のない中で哲久さんを軽井沢まで追いかけて制作してもらった「湿板写真ドキュメントVol.4」にあたる、今回27日より「Pace/Macgill Gallery」にて開催される企画展「Made in the shade」の図録のようなものが刷り上がる。その加藤さんの相変わらずの光そのものを感じるかのような秀逸な印刷に感嘆。そして今日は宵の口より、このあたりの鎮守の杜でもある中目黒八幡神社にてスタッフ全員でご祈祷をしていただく予定。いよいよ出陣の様相たけなわな感じ。とはいうものの、その慌ただしい感じにただ振り回される、降ったり上がったりの空。@中目黒

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またしても久しぶりのブログ。こうやって一週間程空いてしまうと、読者も心配になるようでたくさんのメールを戴く。多謝そして陳謝。そんなわけで今日は久しぶりに日常の空に戻っては来た。しかし未だに目覚めると、自分が何処にいるのか定かではない。しかも蒸し暑い毎日が続いている。この陽気のせいも手伝ってか?この一週間を簡単に振り返ってみようとするも、いろんなことがはっきりと思い出せない。昨日のことが本当に昨日のことなのか?それとももっと前のことなのかの記憶がとてもボンヤリしている。(苦笑)週末は、今月末よりニューヨーク展と同時に大阪で開催さえる「阪急展」のための作品の搬入に久しぶりに、池田さんに借りた車を運転して大阪に向かう。やはりこれだけの長距離運転の往復はかなりきつい。昨日は途中京都で下車して、Gallery・DOTに顔を出し、新選組観光。「我が思いは土方なり」(笑)考えてみればこうやって壬生寺を訪ねるのは今回が初めて。もちろんご近所は昨年の大河ドラマのおかげで、未だにその余韻が残っている。こちらもその郷愁に大いに浸り、その後夜の東名をひた走り、何だかんだと深夜の帰宅。それでもグッタリと帰宅した後、コンフェデ杯のギリシャ戦を生でテレビ観戦。その甲斐あってか、それはそれは嬉しい快勝! 思わず救われたような気持ちになる。 そして一夜明けて今日は、朝から眠たい目を擦りながら家を出て、先日納車されたプリウスで都内を循走。相変わらずグルグル廻っている。そして忙しいにもかかわらず、夕方に事務所に戻って、ちょっと涼しくなった夕暮れの空を眺めに近所を散歩する。散歩から戻ると暗室では久保さんが、またしても新たなる一枚を作るために試行錯誤を繰り返している。そして、いくつかの作業を終えて、これよりようやくその作業に合流予定。疲れがこの湿度の高い空の下で蓄積するも、まだまだ終わらぬ山場の空。@中目黒

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昨日から池田さんのお店「UBU SAIPAN」がオープンしたので、そのお祝いでサイパン。しかしその肝心なお祝いの品を忘れて来るという為体。(苦笑)昨晩は内輪の人が集まって試食会のような食事会。厳しい食材の中で、高田さんが工夫を凝らして作られたその全てが秀逸、そして美味。またひとつ楽しみが増えた。多謝。今までサイパンというと、個人的には決して好きなところではなかった。それというのも戦争の傷跡があまりにも生々しくて、その自身の居場所にいつも戸惑いを覚えていたから。しかしこうやって池田さんがお店を作ったことで、今までとは少し異なった距離感で、この島を感じているのは確か。今月末に初めて天皇が訪れる予定との新しく出来た「American Memorial Park」ひとつにしても、もっと日本がここで出来ることがあると感じた。それを池田さんは自分のやり方でこうやって始めたと言うことなのかもしれない、などと改めて感心。そして今日は日曜日。久しぶりにゆっくり休んでみんなで「HYATT SUNDAY BRANCH」。実はサイパンはホテルにおけるインターネット事情が悪くて、いつも接続に右往左往していたが、ここは無線LANがラウンジなどに完備されていて、メーラーからメールが送れないなどの不具合はあるものの、おかげでスムーズな更新が出来ている。食後、ちょっと「空る」かと近所を散歩。しかし幸い天気に恵まれたこともあってとにかく暑い。あっという間に汗が体内より噴き出してくる。光もぼくの紫外線メーターを振り切る程に紫外線も強い。それはおそらく東京の数倍にも及ぶ? 街のいたる所で現地の人々が「南洋桜」と呼んでいるちょっとデイゴに似た木が、赤い花を咲かせている。その鮮やかな色彩と共に、その命名にこの地と日本の深い関わりを感じる。木陰では子供たちが遊んでいる。この日差しの下を歩くのはあまりにも無謀な、あっという間にボーッとするまさに高温多湿な空。@サイパン

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今日の東京は朝から曇り空。忙しい最中ではあるが、今日を逃すとそれこそその機会を失ってしまうので、ここは自身の勘のようなものを信じて、山代温泉に向かう。しかもその途中名古屋で下車して、学生時代の級友板垣に会う。短い時間ではあったが、会いに来て良かったと思えたので、どうやらこの強行旅行はそれだけでも間違っていなかった模様。そして先程日本列島を跨ぐように、電車を乗り継いで本日の目的の宿「あらや」さんに到着。女将さんと夕食に出かけるまで少し時間があるので、テレビを点けるとニュースでは次から次へと選手たちのインタビューが続いている。そんな感じにちょっとゆったりとW杯出場の余韻に浸りながら、加賀調に設えられた部屋でブログなど更新してみる。窓の外には、夕日がキラキラと舞っている。ここに来るまでの電車の車窓には、梅雨を待つように生き生きとした水田の風景が拡がっていた。遠くには山が連なりそれらの全てが日本の風景。ぼくにとっては、それらの風景が何よりも美しい光景として目に映る。そんなふとした瞬間に自身が写真家であることを改めて自覚しながら、季節と共に自身の季節も移り変わっているようにも感じる今日はひとり山間の空。@山代温泉

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先程ついに我らが日本代表が、あの北朝鮮を粉砕し、三大会連続でワールドカップの出場を決めてくれた!
今日はこの慌ただしい最中、早々に早仕舞い、(苦笑)もしご迷惑をおかけした方がいましたらごめんなさい。今日は、朝からそんな栄えある一日を祝うように?N.YのPace/Macgill Galleryより正式なプレスリリースが届く。何とその中にロバート・フランク氏の名前が! そのことがぼくにとっては何よりの吉報。そして今日は昼間舘野さんと約束していたので原宿に向かい、昼食の後、現在「international gallery beams」でも店頭に立っている佐藤さんにいろいろ教えてもらいながら、洋服を吟味させていただく。結局超弩級の「Luigi Borrelli」のシャツを一枚購入。その秀逸な職人技に感嘆。今は、特にその部分に反応してしまう。先日加藤さんのところに行ったときに、彼はドイツ製の印刷機をイタリア人が刷るのが最高だと言っていたが、ここでもやはり、イギリス製の生地でイタリア人が仕立てるのがいいということなのかと?妙に納得しながら、改めてイタリア人のちょっと思いきったやり口に興味津々。そして夕刻には、忙しい最中に哲久氏が、現在進行中の「湿板写真ドキュメント本」のための、バインダーとボックスの見本を届けてくれる。これも、いよいよここまで来たかと思うと感慨深いものがある。その秀逸な一連の哲久氏の仕事に改めて多謝。
何はともあれ、やった、やった、やった〜な空。@東北沢

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今日はグッと気温も上がり、蒸し暑い一日。それでも夕方になっていつもの目黒川沿いをお散歩すると、ちょっと涼しくて気持ちがいい。近所の紫陽花もご覧のように咲き始めたし、どうやら梅雨も近い。そんな季節の変わり目だからというわけではないけれど、いろんなことが行ったり来たりしている感じがする。何だかんだと慌ただしいものの、気が付くとものごとは大して進んでいない。(苦笑)そんな最中で、季節を告げる花を見つけると、季節が移りゆく時間を感じながらその瞬間の時間は、不思議ととてもゆったりしている。気分次第で、風も変わるような季節変わり目の空。@目黒川

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スッキリしない天気が続いている。しかしそれも束の間との天気予報ながら今は青空。そして昨晩は深夜のバーレーン戦。嬉しいことに日本はアウェーながら大きな一勝を勝ち取ってくれた。それだけでもこの鬱陶しい天気を吹き飛ばす勢い。そんな世間的にも嬉しいニュースと共に、昨晩は、昼間事務所内で、今月末より開催する「阪急展」で展示する写真を並べてちょっとした内覧会。その後、近所の「椀々」で東京観光写真倶楽部の顔合わせ?というか、清野さん企画のぼくのニューヨーク展に向けての壮行会のようなものをやっていただく。何だかんだと20数名の友人が集まってくれて、心より多謝。もちろんその全員がぼくにとって大切な仲間で、そういった人たちが楽しそうにしている様を見ているだけで元気が出る。今日はこのあと天気が荒れる模様ながら、それでも必ず晴れはやってくる。そんな当たり前のことを改めて思い出さしてもらうことが出来た瞬間でもあった。そしてやはりそんな場所はいつの日も「アカルイトコロ ハ アタタカイトコロ」。

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昨日になってしまったが、月島にある印刷屋さん「プリントアーツ」へ、今月末より大阪で開催される阪急展のDMの刷り出し立ち会いに行ってきた。その代表の加藤さんは一風変わった職人気質のおじさんなのだが、初めて会った時から不思議と気が合っている? そして気が付けば、そんな加藤さんとのやりとりもかなり長いお付き合い。例の「湿板写真ドキュメント本」も、その写真を見た加藤さんが「この印刷俺にやらしてくれ!」というところから始まったもの。あの本を見ていただいた方はご理解いただけると思うけれど、その印刷は一色刷とは思えない程の仕上がり。そしてあのロバート・フランク氏も絶賛した一連の銀板印刷も、加藤さんの秘策より生まれたもの。そんなわけで、常日頃より「プリントが写真」と思っているぼくにとっては、プリンターの久保さん同様に大切な人。彼は本当にユニークな人で、最初はまず人の話を聞かない。(笑)それでいて、深夜製版をやっている最中に電話してきて「菅原さん、これいい写真だねぇ〜!ジャー」と一方的に電話を切るような人。(笑)そんな加藤さんは、毎年年末になると食事に誘っていただき「俺たち、職人同士だから気が合うんだよなぁ〜」と、毎年のように繰り返す。(笑)ところが今回、そんな加藤さんがぼくの意図していることがわからなくなってしまったようで、「ちょっと見に来て」とのことで、前から見たいと思っていた刷りだし立ち会いに、久保さんもお誘いして行ってきたというわけである。(久保さんも早速自身のblogで紹介している。)
加藤さんのところにある印刷機はご覧のように一台のみ。しかしこの一台が実はちょっとしたもの。印刷機としてはもっともポピュラーなドイツの「HEIDELBERG」。その重厚でいて精巧な作りはまさに車で言えばベンツのようなドイツ製そのもの。現在、印刷業界の主流は4色オフセット印刷で、そのほとんどはインクさえも自動的に排出されるデジタル制御されたもの。しかしこのハイデルベルグ製の印刷機は、おそらくこのモデルとしては日本で唯一の2色機。その最大の利点はインクが通常のものよりも盛れるということ。しかも彼らは、その機械を使って明らかに他社よりも黒いインクを使用している。その結果、印刷物の表情は独特のマチエールを持ち合わすことが可能となる。それは特にモノクロの純黒調の写真場合には、もちろん使用する紙にもよるものの、ぼくが好んで使ってもらう「ヴァン・ヌーボー」あたりになると絶品である。しかし今回の印刷原稿は温黒調のモノクロ写真である。以前、同じ写真を4色印刷でポストカードを作ったことがあるけれど、悪くはないがモノクロなのにもかかわらず、不思議といろんな色を感じてしまい、何よりも美しいながらもその写真が持っている空気はそこからは消えていた。だからといって、ぼくは印刷が写真に忠実である必要は無いと思っている。印刷は印刷だし、写真は写真なのだからお互いにいいところがあるに決まっている。よってぼくにとっていい写真印刷とは、その写真原稿が持っている雰囲気を伝えることが出来る印刷を、いい印刷と呼んでいる。今回の写真は、数年前にアフリカのサバンナで撮影したもの。季節は雨期。ぼくは草が鬱そうと生い茂る中で子供のキリンが雨宿りをしている瞬間に出会った。その目の前に突然現れたその光景は、遠くは雨に煙り、そこにいるキリンと共にそこに存在する全てのものが確実にひとつの世界と存在していた。そのことが何となく嬉しくてとても幸せな気分で撮影したその写真には、その気配のようなものが完全ではないにしても写っていた。そしてぼくはその光景がとても暖かいものと感じたので、プリントの際に温黒調の印画紙を選択した。
驚くことにそんなことが、加藤さんには不思議と知らない間に伝わっている。ただ今回は、そのちょっとした色味を掴むことが難しかったとのこと。しかし結果は、おそらくこの写真でこれ以上の印刷はないという程の仕上がり。これは久保さんも書いているけれど、実は日頃のコミュニケーションの賜物とも言える。そして、それは改めてダブルトーンの可能性を感じた瞬間でもあった。昨今では、デジタルの台頭と共に、写真プリントの世界ではインクジェットプリントが、目を見張る勢いで向上している。その実際の粒状性及びに精巧さは、既に印刷のそれを大いに凌駕している。しかしどうやら問題はスペックだけではないようだ。実際にルーペで見るとしっかりとボツボツとした網点が見える印刷の方が、まだまだ相当な倍率のものでない限りピグメントを認識することが出来ないインクジェットプリントに比べても、その奥行きも気配も感じることが出来る。まだまだその職人技は捨てたものではない。ぼくは現在、まさに写真映像の世界は、いろんな意味でひとつの過渡期だと思っている。残念なことに次から次へと銀塩製品がこの世から消えていく。しかしそんな時だからこそ、全てのプリントのいいところをお互いが吸収し合ってこそ、本当の意味で新しくていいプリントが生まれるのではないだろうか。そしてそれは必ず実現するとの思いを新たにした一日でもあった。

December 2017

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