オルタナティブとしてのオーディオ

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一般に写真の世界では、オルタナティブというと古典技法のことを指す。具体的には従来の銀塩写真とカラー写真以外の写真を指してきたが、ここでもデジタル写真の台頭と共にその言葉の意味合いも少々変わってきているように思われる。例えば現在ぼくがやっている湿板写真にしても、オルタナティブの技法のひとつではあるが、自身の実感としては古典技法としてそれを捉えてはいない。現にぼくは、最終的なプリントを定着する上でデジタルプロセスを使用している。そう考えるとそれはむしろこのオルタナティブ「Alternative」という言葉が本来持ち合わせている「代わりの」という意味合いの方がむしろ近い意味合いを持っているように感じている。
今回自身の趣味でもある「オーディオ」を敢えてオルタナティブと言ってみたのもそんなことに起因している。もちろんオーディオ装置は音楽を再生するための装置である。しかもご覧のような大袈裟なシステムになると一般的にはそれだけでいい音が鳴ると想像されるが、実はそんなことは全くない。確かにハイエンドオーディオというのは、他の再生装置に比べると情報量が増えることは確かだが、それが聴者にとって必ずしもいい音であるとは限らない。それは写真の世界で言えば、フイルムサイズが大きくなったからといって必ずしもいい写真が生まれるわけではないという事実と類似している。しかしそこに具体的な必然があったとすると、その状況は一変する。例えばひとつひとつの機材の特徴を吟味し、同時に自身が求めている音のイメージと重ね合わせながらシステムを構築していった場合、時にしてその想像を大きく超える程の印象深い音を再生することがある。その一瞬の快楽が、このオーディオという趣味のすべてといっても過言ではない。そしてオーディオのその機材の選定及びに電気的なシステムの構築は、写真のそれと驚く程に類似している。現にこのオーディオという趣味がなかったなら間違いなく、ぼくは湿板写真を試行していないと思われる。そう考えるとぼくにとってはオーディオさえも、ひとつのオルタナティブといえるような気がしないでもない。
とはいうものの、写真を撮るにしても音楽を聴くにしても、やはり楽しいのが何より。 2005/05/08

December 2017

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