「出来る」ことと「出来ない」こと

大風が通過して、昨夜はてっきり秋が来たと思っていたけれど、夜明けと共にグングン気温は上がり、あっという間に季節は夏へ逆戻り。そんなわけでまたしても蒸し暑い一日だった。ぼくはそんな土曜日に一人事務所で、遅ればせながら久しくお会いしていない人たちに向けての残暑お見舞いを書き続けていた。ギリギリながら、この天気のおかげで安心して書くことが出来た?

物事の巡り合わせというのは、本当に不思議なもので、ぼくはデビューしてかれこれ今年で20年目。ということはこれまで、多くの人たちと出会い、お世話になり、すれ違いなどなどを繰り返してきたことになる。中でも共に長い時間を共有した仲間に対しての思いは特別なもの。その中のある一人の女性から、そんな残暑お見舞いを書いている最中に、嬉しい長文メールが送られてきた。彼女は一時ぼくの仕事を手伝ってくれた。しかし彼女はある日忽然と姿を消した。すごく心配したし、おそらく自分に落ち度があったものと思い、長い時間ずっと心配していた。そんな彼女からメールが来たのである。現在、彼女は北海道で暮らしているとのこと。詳細は割愛するが、そのメールの最後に「愛する師匠」という言葉を見つけ、目頭が熱くなった。そして改めて「たった一言」の大きさを知ることが出来た。

こうやって何となく書きつづってきて、偶然にも「出来た」という言葉が続いた。
だったら今度は「出来ない」こと。

最近、ここでも書いたかもしれないけれど、先月Pace/Macgill GalleryのオーナーPeterさんと話したときに、自身の英語力の低さに嫌気がさし、英語の勉強を始めた。既に数時間の授業を終えたものの、今のところ一向に向上の兆しが見えてこない。先生たちは口を揃えて「No problem」を繰り返すが、ぼくには全てが「Problem」(笑)しかもぼくは、特別この語学というものに興味があるわけではなく、ただ道具として必要だと思っているだけなので、尚更「出来ない」につながっていってしまう。しかし、そうも言ってられないので、今は頑張るのみ。

そしてもう一つの出来ないことが久しぶりに始めたギター。こちらは子供の頃はそれなりに弾いていたので、先の英語とはちょっと話が違う。先日久しぶりにギターを弄ってみて、まるで弾けなくなっていることが発覚し、かなりショックを受ける。そんなタイミングで、実は沼ちゃんもギターにはまっていることを知り、先日触らせてもらう。その音にかなり心打たれる。久しぶりに聞いた本当のギターの音。それもそのはず、彼の楽器群は既に「デビューの準備が出来ている」とのこと。(笑)
ぼくはとりあえず練習用ということで、大学時代に途中で断念していた憧れの「Robert Johnson」目指して、オリジナルのGibsonというわけにはいかないので、取り急ぎGibsonの廉価版ブランドEpiphoneの「L-00」の中古を入手する。当然のことながら肝心の音の方は、沼ちゃんのギターと比べると。。。 こちらもまだまだただ指が痛いだけのことではあるが、楽器も含めて一日も早く要ステップアップ。しかも自分の技量とは別のところで、その選択肢は拡がるばかり。(笑)そんなわけで、こちらは同じ出来ないでも気分はずいぶん違うもの。

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「Robert Johnson」というのは、今更言うまでもなく1930年代に活躍した、その後の全てのギタリストが崇拝する程の天才的なブルースギタリスト。学生時代に京都の「磔々」「拾得」というライブハウスに足繁く通い、憂歌団やBreakDownのステージを見ながらブルースに傾倒していったぼくにとっても、当然、彼はスターだった。しかし彼のギターが醸し出すグルーブは独特のもので、コピーなんて出来るはずもない。そんなこともあってアコギでブルースが憧れなのである。とはいうものの、いきなりは無理なのでまずは大好きな「山崎まさよし」さんのコピーあたりから始めてみようと思ったのが、大きな間違いだった? ぼくはデビュー当時「音楽と人」という雑誌で、二度程撮影させてもらったことがある。それこそあの「セロリ」が流行った頃だった。とにかく軽く弾いてくれたギタープレイも含めて格好良かった。しかし今までライブを見たことはなかった。今回、コピー用にと思って「One Night Stands on films」なるDVDを入手してみた。そしてあの大きな武道館をギター一本で演奏する彼の姿を初めて見て、驚きと共にかなり感動してしまった。とにかく簡単にコピーなどできる代物ではない程に、彼のギタープレーは秀逸であった。何よりもまずは「まさやん」からなどと軽率に考えたぼくを許して下さい、という感じだった。(笑)

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そして改めて大ファンになったことは言うまでもないけれど、ぼくは当面の目標を失ったことにもなる。しかし、いいものを見つけた。Eric Claptonである! もちろん彼もRobert Johnsonに傾倒したギタリストの一人。それこそ往年の彼はいわゆるエレキでブルース・ロックを弾きまくり、もちろんぼくにとっても憧れのギタリストだった。しかし最近の彼は、あのアンプラグド・ライブ以来アコギを多用している。しかもRobert Johnsonのカバーアルバムを何枚も出してる。もちろんClaptonといえば「ギターの神様」といわれる程のギタリストなので、そう簡単に出来るようになるとは思わないけれど、少なくともオリジナルのそれよりはまだ可能性があるような気がする? そんなわけで目標が出来た。しかしこちらも先は長そうだが、これは楽しみな「出来ない」のひとつ。

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「夏」と「秋」の間の中で、ふたつの「出来る」と「出来ない」が錯綜する全てが変わり目の空。@中目黒

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