「ROBERT FRANK」という憧れ

今日の東京はまだまだ日差しは強いけれど、秋近しを感じさせる爽やかな風が吹いている。ちょっと目黒まで用があったので、久しくお蔵入りしていた自転車を走らせる。走っているときは気持ちがいいけれど、停まるとさすがにまだちょっと汗ばむ。ついつい木陰でひと休み。

その木陰の隙間から見上げる空には、体感温度以上に雲は既に秋な空。@目黒

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そしてその明らかに季節が変わったと感じる風を受けて、一気に目黒からのダウンヒルを楽しみ事務所に帰ると、何とロバート・フランク氏から一通の手紙が届いていた!

ロバート・フランク氏は、現在の写真界に多くの影響を与えた偉大な写真家であることは言うまでもない。氏のデビュー作でもある「The Americans」は、今となってはストリート写真の原点でもあり、その高度成長期のアメリカを撮り下ろした写真群は、見るものにスナップ写真における芸術性の高さをまざまざと印象づけたといっても過言ではない。現に聞くところによると、現在アメリカの美術コレクターの間では、ピカソの絵とロバート・フランクの写真を持つことがステータスとのこと。

Robert Frank: The Americans
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ぼくは今年の三月にニューヨークを訪れた折、日本における通訳などのお手伝いをした太田菜穂子女史に連れられてロバート・フランク氏の家にお邪魔した。その時は何の話をしたわけでもなく、学生時代に買い求めた「The Americans」を持参して、恥ずかしながらサインなどしていただいた。(苦笑)そして近所のCafeでパフェなどご馳走になってしまった。(笑)とにかく往年のファンであるという欲目を抜きにしても、その存在は等身大ながらとてつもなく大きいと感じた。その瞬間、漠然とながらいや、ある種の確信を持って、その時点でNewYorkにおけるプレビューに関して、当時必然を失っていたぼくは「ロバート・フランクに観てもらう」という新しい目的が生まれた。そして、そんな思いも束の間、幸運にもその晩にロバート・フランク氏より太田さんに電話があって、「彼は珍しく写真に対して真摯に対峙している人だから、大切にした方がいいよ。一度Peterにも観てもらったら」と進言してくれたことが、今回のPace/Macgill Galleryにおける「Made in the shade」展につながった。しかもぼくは「ロバート・フランクに観てもらう」どころか、「ロバート・フランクと一緒に展覧会をやる」ことになってしまったわけである!

そんな彼から手紙が届いた。しかもその中には彼ならではのPolaroidが2枚と、またしてもぼくを狂喜乱舞させる程?の短い手紙が同封されていた。そうやって、またひとつ宝物が増えた。
実はここのところ、自身についての進む道に確信と覚悟はあるものの、少しばかりまたしてもその必然のようなものを失っていたような気がした。しかもそれは無意識のうちに。

そして今日、たった一通の手紙がそれを気が付かせてくれた。
改めて、どんなかたちであれ「ロバート・フランクになる」と決めたことを。

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March 08,2005 New York at Mr.Robert Frank's house
photo by Ichigo

December 2017

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