ニューヨークの展覧会があったこともあって、延び延びになっていた「東京観光写真倶楽部」が、本日より、いよいよ活動開始!
第一回目の撮影地は、当初の予定通りに築地。半年程順延された上に、今日は来られない人も多かったので、少人数でスタートと思っていたが、それでも参加者は30数名! これは見た目にもちょっとした一学級。しかもその様子は、もちろん仕事ではないので、まさに倶楽部な感じ。
まずは、朝9時に築地横丁入り口付近に集合して、事務長の清野さんより簡単な説明。その後、ぼくがちょこっとコメントして、集合時間を決めて、早速撮影開始。
今日の天気予報は雨。当初曇っていたので、せめて何とかこのままと思っていたが、空は徐々に時折青い空がのぞく。すると、やがて何と!快晴に変わった。改めて強運を痛感。
それにしても、今日は「半値市」だったことも手伝って、特に場外市場はものすごい人出。それこそ写真などゆっくり撮っていられる状況ではない。そんなわけで、ぼくは数名を連れ立って、沼ちゃんのガイドでいわゆる場内市場に向かう。そこはそこで、一般客は少ないものの、玄人の市場独特の活気と勢いがあって、これまた悠長に写真など撮っている状況ではない。しかし当初の第一目的の、「観光」という観点から、それらを考えた場合、そういった目の前に次から次へと立ち現れる光景は、やはり非日常で、僕たちの目を大いに楽しませてくれる。
近い将来、取り壊されることが決まってしまっているその市場の中では、今日も「魚に纏わる全て」が、まさに海産物の宇宙ステーションのように、縦横無尽に動いている。その姿こそ、まさに「流通」そのものを具現化したような印象。
そしてせっかくカメラを持っているのだから、時折邪魔をしないように、カメラを向けて「パシャ、パシャ」と繰り返す。しかしそんなぼくとは裏腹に、時折遭遇する部員の人たちの撮影風景は、真剣そのもの!その姿に、ちょっと焦る。(苦笑)
それでもその感じは、いつも一人でプラプラと散歩しながら写真を撮っているぼくにとって、とても新鮮に映った。そして、その姿を見ているうちに、その結果もより一層楽しみになってきた。
それというのも「写真行為」というのは、基本的にはとても主観的な行為で、よってその視点は基本的には「単眼」である。しかし、おそらくそうやって生まれて来るであろう彼らの写真が一同に会した時、その姿は明らかに「複眼」で見た世界。
その上、現時点ではまだ何となくではあるものの、きっとそこには「複眼」でなければ見えない世界が立ち現れているはず?
そんなことを、思い描きながら市場の中をフラフラしていると、「集合時間」まで、残りわずかであることに気が付く。ちょっと冷静になって、何も撮れていないことを思い出し、これでは部長としてのけじめが付かない? と慌てて、およそ10分程ではあったものの、一人で一気に撮影する。(汗)
そして、それはいみじくも、やはり写真が「単眼」であることを実感する。
集合場所に戻ると、既にみんなが集まっている。しかもおみやげを手にしている人も多く、実はみんなの方がよっぽど「正しい観光」の模様。中でもオノ・セイゲンさんに至っては、しっかりと魚焼用の網を手にしている。(笑)
午後は、自由解散ということで、今後のやりとりを伝達して、各々に昼食に向かう。分かれたとはいうものの、それなりの人数だったので、みんなで大人に「寿司」と決め込んでみた。
ご覧の通りの「まぐろづくし」。味の方も、シャリはさることながら、そこが築地だという気分も手伝って、決して高くはないけれど、贅沢な気分で美味。
昼食後も、少し撮影しようかとも思ったが、名古屋からこのために上京してくれた同級生の板垣が、ぼくのカバンが欲しいというので、早めに終えて、共に代官山の「B印YOSHIDA」に向かう。
お店に行くと、偶然店長の種市さんがいたので、本日の「東京観光写真倶楽部」の模様をご報告。彼も次回は参加したいとのこと。そしてその席で、年内には完成するであろう、現在サンプル制作中の次の商品(未発表ながら、今度は超弩級の本格的なカメラバック)の後に、好評の「PHOTOTE」の「東京観光写真倶楽部」バージョンの制作を相談。乞うご期待!
そもそもこの「東京観光写真倶楽部」というのは、数年前よりいろんな人から「カメラ欲しいんですけど、何がいいですかね?」とか、多くの友人から「今度、菅原さんが撮影行くときに、付いていっていいですかね?」とか、ぼくの写真を見て、「以前写真やってたんですけど、またやってみようかなぁ〜?」とか言っている人があまりにも多いので、だっらたいっそのこと「倶楽部」にでもしてみますか! ということで始まった。しかし先述のように、今年に入ってニューヨーク展などもあったこともあって、皆さんの「待っていますよ」というお言葉に甘えて、結局撮影は今日になってしまった。(多謝)しかも、その間に部員の数も徐々に増えていって、今では優に50名を超えている!
現在、ぼくが個人的に思っているのは、だとしたらみんなで「ものとしての写真」を作ってみましょうか、ということ。これはどういうことかというと、昨今「写真」といっても、その役割は多岐に及んでいる。そしてその大きなきっかけになったのは、他でもない写真を取り巻く世界のデジタル化。最近では、カメラといえば「デジカメ」という程である。その簡単で、多様性を持ったデジカメの存在は、もちろん写真に関わるぼくにとっても、みんなにとってもいいことのひとつであることには違いない。しかしその分、時折「ものとしての写真」の存在が忘れられているように思っている。しかもぼくにとって、写真というのは未だに「プリントというもの」だったりする。そしてぼくは、そのたった「一枚のプリント」が、多くのものを生み出していくという、紛れもない事実をよく知っているつもり。
だから当面は、カメラはフイルムカメラを使い、しかも便利なズームレンズではなく単焦点のレンズでの撮影とした。それはおそらく、今となっては撮影者にとっても不便なことの連続。それもこれも全て「一枚の写真」のため。そして最終的には、全員に自らの手で「ものとしてのプリント」を作り上げることを目標としている。
「観光」というのは、字の如く「光を観る」ということ。そしてプリントというのは「印画紙」に光を当てて、結像させる写真行為。
時にはこうやって、ゆっくりとものを見ながら、ゆっくりとものを作っていくのも、それはそれで楽しいもの。
しかも結果として、そうでなければ見えないことがあることを知ることにもなるはず。
などと、いろいろ書いてみたけれど、何はともあれたまにはみんなで「お散歩」というのも、やはり楽しいもの。
しかも嬉しかったのは、あちらこちらから、今日初めて会った人たちの間で、別れ際に「では、また次の撮影でお会いしましょう!」という会話が、自然と生まれていたこと。
それにしても「またお会いしましょう」って、いい言葉だなぁ。