いよいよ、トリノ冬季オリンピックも開幕した。
そして今日は、遂に力也君の初防衛戦。
昨日の計量で彼に会った時に、
いつもと一緒だったので大丈夫!と思ってはいたものの、
やはり、いざ当日となると、こちらまで緊張するもの。
早めに後楽園ホールに着いたので、
空を見上げると、東京の街は、
その幕開けにふさわしい、美しい夕暮れに包まれていた。
今日のぼくは、ドキュメント写真を撮るというよりも
気持ちとしては、”眼”としてのセコンドのような気分で
最初から、最後まで、彼のそばでその全てを見つめていた。
後楽園ホールの控え室は、力也君ひとりではないので
試合を控えた渡辺ジムの選手が何人もいる。
もちろん今日は、彼の試合がメイン・イベントなので
準備をしている間にも、数人の選手が
その控え室からリングに向かい、様々な結果をもって
そこに帰ってくる。
ぼくは、終始力也君と一緒に、その控え室にいたので
そういった他の選手のすべてに立ち会ったとも言えるわけである。
やがて他の選手がいなくなって、
控え室には力也君ひとりとなる。
すると隣の挑戦者・酒井選手の控え室から、
それはまるで威嚇するように。ミットを鳴らす音が聞こえてきた。
それまで、ぼくらともリラックスして談笑していた力也君も
いよいよ、戦闘態勢に入る。
しかも今度は、それはまるで手の内を見せるように
ものすごい音をたてて、トレーナーのミットにアッパーを打ち込む。
そして前試合の河野公平君も、しっかりとKOを決めてきた
その勢いに乗って、いよいよ力也君も控え室からリングに向かう。
満員の後楽園ホールからは、いきなりの”力也コール”。
そして、いよいよゴングが鳴った。
”おかしい、あのしなやかな力也が堅い”
(後で彼に聞いたら、試合の組み立てをいきなり間違えてしまったとのこと)
それでも試合は、終始力也君のペースで、徐々にその堅さも取れて
パンチもかなり当たっている。
にもかかわらず、相手の酒井選手はこちらが心配になる程に
なかなか倒れない。
しかし8R、力也君は遂にTKOを果たした!!!
リング上には、担架が入り、ちょっと心配。
素人ながらに、レフリーももう少し早く試合を止めてもよかったのでは?
当然のことながら、ぼくもリングサイドに張り付いて試合を撮影したけれど、
残念ながら、この小さな世界の中で、妙な縄張りみたいなものがあって
下らない意地悪の連続?(笑)
この感じは、以前”東京コレクション”でも味わったけれど、
ただひたすらに情けないというか、かなしい。
それでもぼくは彼らと違って、
それも含めてのドキュメントと思っているので
何の問題もなかった。
とにかく、嬉しかった。
ジムの人たちとも、一緒になってその喜びを分かち合うことが出来た。
確かに今日のぼくの立場は、もしかしたらある部分においては
邪魔だったかもしれないけれど、少なくとも中立ではなかった。
きっとジムの人たちにも、それが伝わったのだと思う。
撮影しながら、その勝利を自分のこととして
喜んでいるカメラマンは、他にはいなかったから。(笑)
力也君、初防衛戦勝利おめでとう!!!
そしてスタッフの皆さんも、お疲れさまでした。
でも、ぼくも疲れた〜。