今回の上高地行きの大きな理由のひとつが、
待望の「サイトウ・キネン・オーケストラ」。
このコンサートは、本当に待望という言葉がふさわしくて、
今まで何度も抽選に応募しても、当たったことがなかったのですが、
遂に、その幸運がやってきました。
当日の演目は、
モーツァルト 交響曲第32番ト長調 K.318
武満徹 ヴィジョンズ
マーラー 交響曲第1番ニ長調「巨人」
場所は、松本文化会館
そして指揮者は、もちろん小澤征爾氏。
とにかく、すばらしい演奏でした。
少なくとも、ぼくは生でこれ以上の交響曲を聴いたことはありません。
特に最後のマーラー交響曲第1番「巨人」の演奏は、
小澤さん自身も、その演奏に満足されたようで、
100人近い楽団全員の元に自ら歩み寄って握手をされていました。
その姿を見ているだけでも、ちょっと感動しました。
そして当然、観客の拍手も鳴り止みません。
ぼくの隣の席のご婦人も、
「この15年の中で、三本の指の中に入るほどの演奏です!」
と大変喜んでおられました。
こんなすばらしい演奏が、毎年優先的に聴くことが出来る
松本の人々が、本当に羨ましいと思います。
ぼくが、わかったようなことを言うのも気が引けますが、
この日の演奏は、一言で言うと、
「とても真面目な演奏だった。」と言えるのではないでしょうか。
決して上手いというわけではないのです。
少なくとも、もちろん下手ではないのですが、
演奏者の一人一人の集中力はものすごいものでした。
このように丁寧で、真面目な演奏というのは、
とても美しい印象を伝えることが出来るものなのですね。
もしかしたら、それこそが小澤征爾さんの真骨頂なのかもしれません。
考えてみたら、いつの日も小澤さんの演奏の中には
「真っ直ぐ」という言葉が当てはまるような印象があります。
帰りの車の中で、マーラーの名演と言えばこれ、と言われている、
指揮がバーンスタインで、ウィーンフィル演奏のマーラーは、
もちろん、やはりとても美しい演奏でした。
しかし、今日のサイトウ・キネン・オーケストラのマーラーは、
少なくとも、そんな世界最高の演奏に比べても
それよりも、もっとあたたかくて、とても清い印象がありました。
それにしても、小澤征爾さんという人は、
正に、日本の大きな宝ですね。
今から、来年の公演が楽しみです。