この「Dallmeyer」という英国製のレンズは、
19世紀に開発され、その後多くのモデルが製造されました。
そして、それらのレンズ群は長くに渡って、
世界中の多くの写真家に受け入れられてきました。
しかも100年もの長い間、そのレンズ構造を大きく変更することなく
作り続けられたわけですから、開発当初の水準の高さは
それこそ、ものすごいことなのかもしれませんね。
このレンズについて、性能やエピソードなど
いろいろ教えてくださったムサシカメラの井上さんの話では、
昔はこのレンズが一本あれば、それだけで写真館が成り立った、
というほどの名声と信頼性を持った代物とのことでした。
ぼくは、そんな「銘玉」の誉れ高いレンズを使用して、
今日、初めて撮影を試みました。
しかもその方法は、その開発当時と同じ「湿板写真」です。
考えてみたら、久保さんと共に長い時間
この「湿板写真」という古典技法に取り組んできました。
しかし、それはその方法に興味があったからではなく、
もちろん、目的あってのことでした。
とにかく、来る日も来る日も、あたたかい光を追いかけてきました。
そしてその中で、ぼく達は様々な発見をしてきました。
ところが、今だから言えることかもしれませんが、
当初目指していた方法と、その感じみたいなものは、
実はまだ捉えきれていなかったのでした。
言葉で説明するとちょっと長くなってしまいそうなので割愛しますが、
一言で言うと「写真らしい写真」ということなのかもしれません。
そして今日、このレンズを手に入れたことで、
目的と、その方法と、その道具が、
ひとつの大きな線で結びついたような印象を受けました。
しかもこの太い線は、確実にずっと写したいと思っている
あたたかい「光の温度のようなもの」を撮るにあたって、
おそらく現在のぼくにとっては、
これ以上はない大きな線になっているように感じています。
しかもこの道具は、あくまでも道具の中のひとつです。
現に、ぼくは偶然という幸運も重なって、
この数年間の中で、他の方法も知ることが出来たように思います。
そしてだからこそ、それらすべての経験を生かして、
この大きな線で見えるものをしっかり見定めていきたいと思っています。
それにしても、改めて、ちょっとワクワクしてきました。