ぼくの中では、山岳写真といえば田淵行男氏。
一般的に山岳写真というと、ある種絵葉書的な写真が多い中で、
これもぼくだけの所感かもしれませんが、田淵先生の写真だけは、
なぜかとても個人的な思いみたいなものを感じることが出来るのです。
それもそのはずで、先生は写真を撮るために写真を始めたのではありません。
自身の博物学的興味の中で、最初は写真を始められました。
そして、後に先生の中で、”写真”は大きく育っていったのではないでしょうか。
そんな田淵先生のカメラであったり、テントであったり、
そして、驚くほどに秀逸な絵画と共に、安曇野の写真が展示されています。
しかも、その「田淵行男記念館」は
こんなかわいらしいわさび畑の上に建っています。
その写真の展示方法には、少し疑問が残りましたが、
そのたたずまいは、田淵先生の写真にとても似合っています。
そして今回、ぼくにとっては「お礼参り」のような訪問でした。
なぜなら上高地帝国ホテルの75周年記念として発行された写真集「神河地」は、
時間のない中で、すべて撮り下ろしというかたちで撮影を進めました。
それでも、あのようにゆったりとした内容に仕上がったのは、
ウエストンの「日本アルプス」という一冊の書籍と、
田淵行男さんの写真が、大きな指針としてあったからなのです。
しかも二人とも、上高地がある日本アルプスに大きなおもいを馳せていました。
だからその思いに大きく影響を受けた写真集が、
そんな二人の思いに少しでもつながる役割になったならば、
それはそれで、とてもうれしいことなのかもしれません。
今はまだ、上高地帝国ホテルのみの販売ですが、
まもなく東京、大阪でも購入できるようになりそうですので、
その時が来ましたら、また改めてお知らせしますね。